末っ子:いつきの幕間1


「う〜ん、見まちがえだったのかなぁ〜?」
 いつきは細い首をかしげてあたりを見回した。太い柱がならぶ一階のホールには、隠れるところがいっぱいあるように見える。柱の陰をのぞきこみながらそれ・・を探す。
「女の子がいたとおもったけど……あれ?」
 ふいに階段上の気配がなくなった気がして、いつきは柱の陰から顔だけを出して見上げた。
 瓦礫の積もった場所に兄と姉たちがいたはずだ。しかしそこには誰もいない。
 その代わり、うっすらと背後を透かした白いもやのようなものが二つ、浮いていた。
 ――つかまえた、つかまえた……
 子供の姿をしたもやは瓦礫の上をくるくるとはしゃぎ回った。
 ――つかまえた、あたらしいおもちゃ……
 それからすいっと上方へ向けて宙を泳ぎ、ぱっと消えてしまった。
「…………うそ」
 慌てて瓦礫へ駆けよれば、そこには誰もいない。
 その代わり、薄い冊子が表紙を閉じて落ちていた。
 いつきは半泣きになって叫んだ。
「おにいちゃん、おねえちゃんたち、どこいったの――?」
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