末っ子:いつきの幕間1 「う〜ん、見まちがえだったのかなぁ〜?」 いつきは細い首をかしげてあたりを見回した。太い柱がならぶ一階のホールには、隠れるところがいっぱいあるように見える。柱の陰をのぞきこみながら 「女の子がいたとおもったけど……あれ?」 ふいに階段上の気配がなくなった気がして、いつきは柱の陰から顔だけを出して見上げた。 瓦礫の積もった場所に兄と姉たちがいたはずだ。しかしそこには誰もいない。 その代わり、うっすらと背後を透かした白いもやのようなものが二つ、浮いていた。 ――つかまえた、つかまえた…… 子供の姿をしたもやは瓦礫の上をくるくるとはしゃぎ回った。 ――つかまえた、あたらしいおもちゃ…… それからすいっと上方へ向けて宙を泳ぎ、ぱっと消えてしまった。 「…………うそ」 慌てて瓦礫へ駆けよれば、そこには誰もいない。 その代わり、薄い冊子が表紙を閉じて落ちていた。 いつきは半泣きになって叫んだ。 「おにいちゃん、おねえちゃんたち、どこいったの――?」 |
copyright (c) 2005- 由島こまこ=和多月かい all rights reserved. |